ならそれでいいです

そろそろ優勝したい

こっそり土を盛る

特に日記として書くことはないので漫画などの感想をひたすら連ねます。

生活としては『痩せたい』『パーマをまたかけたけど前回ほどかかっていない気がする』ぐらいしかないんで。

俺は虚像。

 

ロッタレイン』が完結したんですよ。

ロッタレイン(3) (ビッグコミックス)
 

あんまりにも漫画の中で語りつくされてるように感じるんで、もう何を書いても蛇足になっちゃいそうですが一応感想を書きます。

まずなんですけど、めっっっっっちゃ良かったです。ものすごく丁寧に丁寧にラッピングされた暴力という感じで、いろんな意味でくらいました。

 

テーマの関係上ナボコフの『ロリータ』と比較されることが多い本作ですが、ひたすら歪んだ愛情の対象として描かれていたドロレスと違って、初穂はかなり能動的なヒロインなんですよね。まあそのせいで悪女感が出ちゃってるんですけど。

あと三巻の各人物の発言にも表れてますけど、年齢よりもどっちかというと(血の繋がりはないものの)兄と妹という関係性が問題視されてますよね。二人以外の家族が二人を引き裂こうとしているところなんかはその象徴なのかなと考えたり。

なんでまあ、個人的には『ロリータ』とはそこまで関連性を感じなくて、家族という言葉のほうがキーワードとして強いのかなあと感じました。これは松本剛という作家のなかで田舎の閉塞感(これも本作にはバリバリに出てきます)と並んで重要なものだと思っています。まあもちろん、『ロリータ』を念頭に置いて描かれた漫画ではあるんでしょうけれど。

 

ラストシーンはもうあれ、なんなんですかね。「おおうう……」ぐらいしか言えなくないですか。ねえ。

結論としては最終話の蛍子のセリフが全てだと思うんですよ。これから先初穂は一と違う時間を生きて、違った変化をしていくはずです。でも一に何も残らないのかというと、それは違うんじゃないでしょうか。

物語の開始時に文字通りどん底にいた一は、初穂との出会いと別れを経て生きていく活力を取り戻したように思います。心のどこかで果たされないことを確信しながら、初穂との約束を支えに彼自身の道を歩んでいくのでしょう。

最後のページに描かれているのは二つの風船が初穂の手を離れ、どうしようもなく離れながら高く高く飛んでいくカット。言葉はなくともしっかりと二人の未来を暗示するとても印象的なものでした。

欲求や嫉妬などの眼を背けたくなるような部分をいやらしくならないように丁寧に丁寧に描きながら、同時にキャラクターたちへの優しい眼差しを感じることの出来る大傑作です。

 

北北西に曇と往け / 入江亜季

北北西に曇と往け 1巻 (ハルタコミックス)

北北西に曇と往け 1巻 (ハルタコミックス)

 

入江亜季アイスランドを舞台に描いた漫画っていう時点でもう買うしかないんですよね。

とにかく一話で描かれる異国のはちゃめちゃに豊かな自然と土地の余ってる感じにおわーっとなります。そしてこの話が事故で横転した自動車の車内と周囲だけで完結してるのも凄いです。

 

冬の日の朝の感覚ってあるじゃないですか?尖った風に切られたように感じる頬を指でなぞったらその部分だけじんわり暖かくなって、洟をすすりつつ霜をしゃこしゃこ踏んでるうちに駅まで着いてて、気が付いたらポッケに突っ込んでしまってる手とか、いつの間にか竦められてる首とかを覆うものを探さねば、と思ったことも通勤電車の強すぎる暖房で気持ち悪くなってるうちに忘れてしまう、あの感覚の話なんですけど。

 それをめちゃくちゃ濃縮して濾過したものがアイスランドの空気なのかな、とかそういうことを考えながら読める漫画です。本当に紙面を漂う空気が全部透き通ってます。日本が舞台になるシーンでは明らかに空気感が変わってるし。なんなんですかこれ?

僕は本気で漫画や小説や音楽は飛行機や船やタイムマシンでもあると思ってるんですけど、これを読んでまたその認識が深まりました。それは夜毎に打ち震えている顔馴染みの感動ではあるんですが、何を見てもそう思うというわけではないんですよね。

 

バタフライストレージ2巻 / 安堂維子里

バタフライ・ストレージ 2 (リュウコミックス)

バタフライ・ストレージ 2 (リュウコミックス)

 

なんか気が付いたら二巻出てて完全にスルーしてました。俺はこういうことをよくやらかす。

一巻のときも同じような感想垂れ流してた気がしますが、とにかく「人間が死ぬと蝶になる」っていう設定が画として美しくて、ね。もうそこにある詩情というかなんというかだけでグイグイ引き付けられてしまいます。

主人公含めてキャラの堀り下げが進められつつ、敵の正体も徐々に明確になりつつある、物語としてはかなり前進した感のある一冊でした。

 

レイリ / 室井大資 岩明均

ま~~~ずっと面白い。歴史ものの漫画がそんなに好きじゃないんですけど、それでも毎巻めっちゃ楽しませてもらってます。

この巻とても絵が良いんですよ。こんなに良い表情の出てくる漫画だったっけ?って思っちゃうぐらいに。

ある種達観してしまっているところのあるレイリの人間臭い部分がゴロンと転がり出てくるようなコマ(読んだら分かると思います)で一気に感情移入してしまいますね。

作者特有のとぼけた味わいのやり取りとか、明らかに悪く描かれててウケる織田信長徳川家康とか、骨太なストーリーの節々に「抜き」のポイントがあって本当によくできた漫画だなあと感心してしまいます。

 

好奇心は女子高生を殺す / 高橋聖一

好奇心は女子高生を殺す 1 (サンデーうぇぶりSSC)

好奇心は女子高生を殺す 1 (サンデーうぇぶりSSC)

 

現代におけるS・F(すこし・ふしぎ)の体現者と言えば石黒正数、つばな辺りの名前が挙がると思うんですが、高橋聖一もこの二人に引けをとらない名手ではないでしょうか。

前作『よいこのSF短編集』はかなり闇鍋感のあるごちゃ混ぜの一冊でしたが、それと比べるとこちらはかなり整理された作品のように感じます。とはいっても次から次へと飛び出すはちゃめちゃな展開の生み出すスピード感は前作と遜色ありません。

ポップな絵柄に矢継ぎ早に飛び出すぶっ飛んだアイデアに可愛い女子高生。めちゃくちゃ欲張りな漫画です。

 

米澤穂信古典部 / 米澤穂信

米澤穂信と古典部

米澤穂信と古典部

 

もう中学の時から読んでるシリーズなんで、こういうファングッズ的なものでも買っちゃうんですよ。反射で。

書き下ろしの短編の没原稿っぽさはまあ置いておいて、ファンなら買って損はないかなあという印象です。少なくとも僕は小説家のインタビューを読むのがとても好きなこともあって楽しめました。

あと後ろの方に他の作家から米澤穂信に質問するコーナーがあったんですが、辻村深月賀東招二なんかに混じって谷川流の文字があって「生きとったんかワレェッ!!」と思わず叫びました。

もう小説にして出せなんて無理は言わないので、「ハルヒはこうこうこうするつもりでした」みたいなメモを俺たちに読ませてほしい。早く呪いを解いてくれ。

 

 

あと宝石の国のアニメが良すぎてニコニコに課金して買ってしまいました。原作の漫画表現としての良さを上手く映像に落とし込んでて愛を感じます。

というかフォス役の声優さんめっちゃ上手ですね。初めて名前見る人だったんですけどとてもよい。エンディングが鈴木慶一作詞作曲なのもなんでだよって感じで良いです。

みなさんも観ましょう。フォスという存在超良い……ってなりますので。原作も買っていきましょう。

 

だいたいこんな感じでーす。

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正しくも悪くもありません。

めっちゃ久しぶりのブログなんですよね。なんでかというと働き始めたら休みの日は遊びたくなってしまって出掛けまくってるからなんですけど。もうインドアの看板は下ろします。いやでもこの三連休はほぼ家にいる予定なんで、もうちょっとインドア名乗らせてもらってもいいですか?

いろいろあった気がするんですけどそりゃ二ヵ月も経てばいろいろあって然るべきだろというアレがアレなんで、なんか印象深いアレをアレで。

 

えー、25歳になりました。まだ信じられないんですけどね、25。字に起こすとキツイにも程がある。こんな25歳見たことありますか?僕このまま誰も見たことのない30歳40歳になっていくんですか?なるべく早くおじいさんになりたい。そうしたらクソデカい洋館を買って、年中スーツ姿でロボットのメイドと暮らすんだわ。

で誕生日の翌日が挫人(くじきんちゅ)の手伝いだったんですけど、前日に下川氏から「カラオケオンリーでやるから菅さん呼んでないんだけど、代わりにドラムのとこにいてくれない?」って言われたんですよ。マジでなに言ってんのかわからなかったんですけど「なんなんだ……」と思いつつ適当に了承したんですよね。そしたら

 

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こうなって

 

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こうなりました。

 

いや、O-EASTって僕みたいな一応バンドやってる人間からしたらかなり上位の存在のステージなんですよね。単純にキャパ1300とかで普段演奏してるライブハウスの七、八倍のサイズだし。なんなら来月下川氏とイースタンユース観に行く予定だし。

新譜とてもよい

 

そこにこんな感じで立つのって意味不明というかなんというかで、「いつの間にか人生バグって裏ステージ入っちゃったのかな?」という気持ちでした。いやバグってるのはその通りなんですけど。

「全ての感情をオフにして立ってて」と言われたのでその通りにしていたんですが、なんかめっちゃ声援送られた(経緯をよく覚えていない)辺りで普通に笑ってしまったのが悔やまれます。あとメンバーが間奏中にこっち見て明らかに笑わせにくるのも地獄でした。

まあでも意味不明なりに楽しかったし、普段の何倍もの人から誕生日を祝ってもらえたので総合的に考えると100点でしたね。よかったよかった。

 

よかった話をもう一つすると僕がずっと細々と続けているSo Sorry,Hoboというバンドがあるんですが、デビューが決まりました。

ディスクユニオン主催のオーディションで合格したのです。来年上旬にCDとレコードが出ます。個人的にはレコードって物体としてデカくてウケるので嬉しいですね。

これについてはいろいろと書きたい気持ちもあるんですが、書けば書くほど野暮太郎になりそうなんでやめておきます。

まあなんていうかやめなくてよかったなあと。いくらでもやめるタイミングはあったと思うんですけど、僕もメンバーもマイペースというか鈍感というか愚かというかなんというかだったので。はい。

とにもかくにも来年の春ぐらいまではアルバムの制作が生活の中心になると思います。誰にでも好かれるようなものが作れないことは嫌というほど理解していますが、形容のし難い意味不明なものが作れる自信はあるのでそのようになっていければという気持ちです。

今までの25年間、絶対に正解ではなかったけど悪いものでもなかったんだなあ。と思ったり。 

 

あと実はもう一つオーディションに参加していて、そっちはカウントダウンジャパンの一般公募枠を決めるやつです。毎年やってるやつですね。岩井が「生存報告会」と評していて言いえて妙だなと思いました。

春に録音してから公開するタイミングが失われていた音源から一曲聴けます。

 

で、「このページにバンド側からのメッセージが載せられるので専用フォームから投稿お願いします」みたいな連絡が運営側から来たんですよね。上限1000字で。

でもライブ告知は別枠で出来るし、そうなると特に書くことって無くないですか?なので以下のような文章を送り付けました。

 

何を書いたらいいのか分からないので日記を書きます。

先週の話です。
その日ぼくは競餃で大負けし、その腹いせに安くて強い酒をドバドバ飲んだ結果ひどく酔っ払ってしまいました。
競餃というのは読んで字の如く餃子を走らせ、その着順を予想するという公営ギャンブルのことです。競馬や競艇には及びませんが、そこそこの人気と知名度を誇っています。少なくとも東京都三鷹市井の頭近辺ではそうです。そういう世界観です。

話を続けます。最終レースで有り金のほとんどを賭けた水餃子が第三コーナーを曲がり切れず転倒し、皮が破れて予後不良となった(スタッフが美味しく頂きました)ことはよく覚えていますが、そのあと競餃場近くの居酒屋になだれ込んでからの記憶は曖昧で、気が付くとぼくは自宅でベッドに倒れていました。そして目を覚ました瞬間にそれを目撃し、驚きのあまり酔いが吹き飛んだのでした。

そこには一辺一メートルほどある半透明の立方体が鎮座していました。「梶原様へ ご注文の品です。どうぞお楽しみください」と書かれた手紙が添えられています。
ぼくは恐る恐る立方体に触れてみました。立方体はぶよぶよとしつつも芯のある不思議な弾性を有していて、少し濡れてもいるようでした。

ぼくは少しの間じっとその立方体を見据えます。手紙の文面を信じるならば、これはぼくが泥酔状態のうちに所望した品とのことです。つくづく自分の酒癖が嫌になります。
それにしてもこれは一体なんでしょう。ぼくの乏しい知識の中には、この物体と紐づいてくれようなものは何一つありませんでした。
ふと、ぼくは自分の手から甘い匂いがすることに気が付きました。さきほど立方体を触った手です。試しに舐めてみると、それは匂いそのままに甘い味をしていました。シロップでした。
ぼくは上からぎゅっと立方体を押さえつけてみました。すると立方体からシロップがぴゅうぴゅうと吹き出しました。ここで初めてぼくはこの立方体がナタデココであることに気が付いたのでした。

ぼくの部屋に、おっきなおっきなナタデココ。ぼくはなんだかとても愉快な気分になって、力一杯ナタデココを抱きしめました。ナタデココは大きくへっこんで、そのぶん沢山のシロップを出しました。
しばらくすると部屋もぼくもすっかりべとべとになってしまいましたが、ナタデココはとても大きいので、いつまでもそうしていられるような気がしたのでした。

CDJ、出たいですね。

 

そうしたら「内容が不適切」とのことで掲載が見送られました。表現の自由ってなんだ。僕的には最後に無理矢理付け加えられた「CDJ、出たいですね」がダメだったんだと思います。嘘をつくな。

梶原笙とSo Sorry,Hoboはカウントダウンジャパン、カウントジャパン、カウパンを応援しています。

 

 

漫画ちゃん、漫画さん、漫画くん。大集合です。

 

ランウェイで笑って / 猪ノ谷言葉

ランウェイで笑って(1) (週刊少年マガジンコミックス)

ランウェイで笑って(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

一話をネットで試し読みしたらばりばりに仕掛けられたフックに引っ掛かり 、一巻が出るのがとても楽しみでした。

尖った天才のサクセスストーリーという大枠の作りは少年漫画っぽくあるんですが、演出とキャラがちょっと変でそこがとても良いですね。

そこそこ長い話になりそうな気もするので、じっくり追いかけたいです。

 

不滅のあなたへ / 大今良時

デカい船なんですよ。いや漫画なんですけど。でも船なんですよ。クソデカい船。

一、二巻がすごく静かで、なんなら地味と言ってしまってもいいぐらいだったんですけど、三、四巻で一段ギアが 上がった感じがします。

その要因はいろいろあるんですけど、一番は魅力的な登場人物が増えたことですかね。主人公の特殊な能力が作品自体の面白さと脇役のキャラの良さを強く結びつけているというのがとても面白いです。

それにしても大今良時面白すぎませんか?『マルドゥック・スクランブル』、『聲の形』、そしてこの『不滅のあなたへ』と全部別タイプの漫画を描いて、全部面白い。漫画のオバケ。

で、これはそんな漫画オバケの代表作になるんじゃないかなと思います。読んでいるといろんなタイプの感情が沸き起こる不思議な漫画です。

 

銀河の死なない子供たちへ / 施川ユウキ

ウェブでずっと連載を追ってはいたんですけど、こうやってまとまった形で読むとまた違った楽しみがあります。

とにかく作中で経過する途方もない時間の描写に圧倒されますね。ものすごくスケールの大きな事柄を上手く要点にクローズアップしながら説明する手際に作者の力量が感じられます。

無限の時間を生きるものと限られた時間を生きるものとの対比が、自分がどこから来た何者なのかという根源的な問いを滲ませてくるところも胸を撃ちますね。

「永遠の命」というある意味定番のテーマを掲げながら、作者特有のストレンジさでありきたりなものにはなっていない、施川ファンにはたまらない作品だと思います。

 

兎が二匹 / 山うた

兎が二匹 1 (BUNCH COMICS)

兎が二匹 1 (BUNCH COMICS)

 

去年かなり話題になっていた気がします。なんとなくタイミングが合わなくて読めずにいたんですが、やっと手に取る機会が訪れました。

正直に言うと主役二人にあんまり感情移入が出来ませんでした。あと作中で重要なものとして扱われている一つのパートが「こう来るんだろうな」という予想そのままで拍子抜けしてしまう、ということも読んでいてありました。

けどやっぱりラストシーンは物凄くて、そこを読んだ瞬間にこの漫画が絶賛されていた理由が分かった気がします。

刺さる人にはとても深く刺さるんだろうな、という感じの漫画ですね。

 

月曜日の友達 / 阿部共実

月曜日の友達(1) (ビッグコミックス)
 

まあこの人の漫画が面白いのなんてもう分かってるじゃないですか。新作もやっぱり面白いんですよ。とんでもなく。

絵がとにかく良くて。建物の異常な描き込みとか、記号的だけど生々しいキャラ造形とか。この辺はもちろんなんですけど、今作は色彩が非常に豊かなんですよね。

光の表現が特にヤバいです。夜中の学校が話の舞台になることが多いんですけど、月の光がプールの水面で反射する場面とか開いているページが実際に光ってるのかと思うぐらい眩しいんです。これは是非実際に読んで実感してほしいなと思います。

話のほうも今までの作品と比べて少し広い感じのある作中世界と、中学生の抱える閉塞感が上手い具合に不穏な空気を出していて新境地の感があります。オススメです。相変わらず登場人物は一人称小説の地の文かと思うぐらいに喋ります。最高。

 

映像研には手を出すな! / 大童 澄瞳

映像研には手を出すな! 2 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 2 (ビッグコミックス)

 

でまあここ二か月のベストはなんぞと聞かれるとこれになるんですよ。もうね、最高。凄すぎ。

一巻がもう非常に良くて、これは凄い漫画が始まったぞと思っていたんですが、二巻は一巻とはちょっと違う軸でこちらの期待を越えてきましたね。

一巻が創作の初期衝動とそれに付随するワクワク感についての話だとしたら、二巻は創作を続ける意思についての話だと思います。水崎ツバメにスポットが当たるこの巻の中でも、彼女がアニメーションを作るということに対しての思いを吐露する場面なんかは特に象徴的なシーンですね。

この漫画の凄いところは創作全てを応援するかのようなパワーが作品全体に迸っているところです。本当に読んでいて元気が出る。

一巻も二巻も名台詞がバンバン出てきて、なんというかここまで印象に残る言葉が出てくる漫画久々に読んだなあという気持ちです。みなさんも是非読んでお気に入りの台詞を見つけてください。

主役三人のキャラも本当に良いし、作中作の設定画の凝りようも最高で、ずっと読んでいたいなと思ってしまいます。超オススメです。

 

あとは『ロッタレイン』の二巻が相変わらずざわつくな、三巻もうすぐ出るけどどうなるんだろう。とか、『ルポルタージュ』の二巻はめっちゃまとまった「承」の巻だな。とか、『波よ聞いてくれ』は話の潮目が変わった感あるな。とか、『三月のライオン』はいよいよ主人公の影が薄まってきたけど相変わらず面白いな。とかそんな感じですね。

漫画はとにかく面白いものがバンバン出てくるので見逃さないようにアマゾンや書店をこまめにチェックしないとなあ、という気持ちです。

 

ちょっとだけ音楽の話をしておくと

ホラーズ

 

ナショナル

 

ウォーオンドラッグス

 

この辺りの新譜が全部良くてとても嬉しくなりました。どれも前作を二十歳ぐらいのときにめっちゃ聴いてた人たちなんですけど、ちゃんとそこからアップデートされたものを作っていてさすがですね。やっぱミュージシャンってすげえわい。ほっほっほ。

 

なんかよくわかんねえけど、やっていくぞ~~。

 

だいたいこんな感じでーす。

飛行機の手触り

 その飛行機は窓の外で静止していた。

 

 久々の休日だった。今月に入ってからずっと仕事に追われていたので、目覚ましをセットしなくてもいい朝というものがこんなにもありがたいとは思わなかった。前日の夜一人で二日酔いにならない程度の飲酒をして、昼前までのんびりと眠り、目覚めると軽く伸びをしつつ一日の予定を考えながらカーテンを開けた。そこに飛行機がいた。

 それはヘリや軽飛行機などではなく、大型旅客機だった。少し薄汚れて、それでもまだ白の範疇にとどまっている機体の鼻がこの部屋に向けられていた。そして、空中に浮かんだままピタリと止まっている。僕が出張や旅行でよく乗ったことのある機体にも見えるけれど、実際のところ飛行機なんて僕には全て同じに見えるような気もする。機体があまりにも近すぎるから側部に書かれているはずの航空会社のロゴも確認出来ず、この飛行機の身元を推理するのは不可能に思えた。

 なぜ、飛行機なのだろう。なぜ、こんな場所にいるのだろう。都心を少し外れたところにある七階建てマンションの最上階。確かに落ちたらひとたまりもない高さではあるが、飛行機が飛んでいていい高さではない。仮にこの低空飛行には目を瞑ったとして、落ちもせず飛びもせず、ただ止まり続けているのはどういうわけなのだろうか。

 操縦席には誰も座っていないように見える。いやに静かだ。なんだか僕と飛行機の周囲だけが切り取られてしまっているかのような、強烈な違和感。それとも昼間の住宅地なんていうのは、どこもこれぐらい静かなものなのだろうか。自分の家の静けさの度合なんてものについて、僕は今まで考えたことがなかった。

 

 寝起きで少し喉が渇くので、水分を求めてリビングへ向かうことにした。牛乳でも飲んで、少し頭を落ち着けてから飛行機のことを考えようと思った。 

 リビングでは美代が、ノートパソコンの前に座って頭を悩ませていた。元々Webメディアの編集を仕事にしていた彼女は、去年の暮れにフリーライターに転じてからはそのほとんどの時間を家で過ごすようになっていた。

 僕はキッチンの奥にある冷蔵庫を開けて、牛乳パックを取り出した。残りが少ないようだったので、コップに注がずパックから直接喉に流し込んだ。喉の渇きはなくなったけれど、飛行機のことはなにも分からないままだった。

 飛行機が街中で停まっているなんておかしな現象なら、ニュースにでもなっているかもしれない。そう考えた僕はスマートフォンを取り出して、いくつかのニュースサイトを立ち上げてみた。けれど、どのサイトも真っ白いページが表示されるだけで、一向に立ち上がる気配がない。端末か電波のどちらかに不具合が生じているのだろうか。諦めた僕は部屋着のポケットに物言わぬ電話機をしまった。

 

「ねえ、あなた昨日私が寝てからテレビを観た?」

 不意に、美代が僕に尋ねた。

「いいや、観てないよ。昨日は帰ってきたら部屋で少し飲んで、そのまま寝たんだ」

「ふうん。なんだか朝からテレビの調子が悪いのよ。故障かしら」

 最後はほとんど独り言のようにそう言って、美代はまたパソコンと睨み合いを始めた。テレビの不具合にはそこまでの関心は無いようだった。薄く聞こえる鼻歌が、軽快に叩かれるキーボードの音と混ざりあっていく。

 

 離婚が決まってからというもの、美代はすっかり穏やかになった。というよりは、元の穏やかな美代に戻ったという表現が正しいのだろうか。もしかしたら美代も僕に対して同じことを思っているのかもしれない。ここ何年か、僕たちは穏やかではなかった。

 数年間に及ぶ罵り合い、憎み合いを経て、僕たちはすっかり燃え尽きてしまった。だけど、燃え尽きたはずの身体からときどき燻りや煙が見え隠れして、それが僕を困惑させた。

 僕の人間の部分はまだ美代と一緒にいてもいいかもしれないと言っているのだけど、僕の動物の部分はこの雌から得られるだけの愛はもらい尽くしたと言っている。僕らの愛の送受信はとっくにその季節を終えていて、今ではただダシガラになった情が二つ転がっているだけだ。

 その二つが腐ってしまわないうちに別れようというのが、僕と美代の出した結論だった。でも、この問題は二人だけで解決してしまっていいものではない。僕は本棚の上に置かれたぬいぐるみの群れを見た。その中に飛行機のぬいぐるみを見つけると、その背を掴んで持ち上げてやる。もこもことした飛行だか滑空だかが、僕の目線の高さで始まった。確かこれは、三年前家族で僕の実家に帰省したときに乗った飛行機で卓也がもらったものだ。子供用の機内食と一緒に配られていた記憶がある。あの日二時間弱のフライトの間五歳児の退屈を紛らわせてくれたこの一機は、その後すぐに飽きられてこうして今日まで忘れられていた。

 

「卓也は今日もサッカー?」

「ここのところ土日はずっとそうよ。今度低学年の子たちだけの大会があるんですって」

 行けたら観に行こうかな、と口に出そうとして、やめた。小学校の入学式も、この間の運動会も、約束だけして結局行けなかった。平謝りの僕に対して卓也はあまり気にしていないような素振りを見せていたけど、どうしても幼い我が子が無理をしているようにしか見えなかった。無理をさせている僕が言うことではないかもしれないが、優しい子なのだ。その優しさが僕と美代のどちらに似たのかは、まだ幼すぎることもあってよく分からないけれど。

 卓也は、僕らを恨むのだろうか。寂しいと言って泣くのだろうか。それともまた無理をして、なんでもないような顔をするのだろうか。僕はぬいぐるみに顔を近づけて、じっと見つめた。安っぽい水色の布で表現されている客席や操縦席の窓の中は、当然ながら窺い知れない。ある意味それは、僕の部屋の外にいる飛行機を忠実に再現していると言えた。

 

 「ねえ」

 僕は美代に語りかけた。美代はパソコンに向かったまま、「なあに?」と軽い言葉を返してきた。

「僕は良い父親でも、良い夫でも、良い男でもなかったね」

 どうしてこんな言葉が出てくるのか、自分でも分からなかった。ただ、この言葉を紡いでいるとき、僕の脳裏には飛行機の姿が浮かび続けていた。美代はいつの間にか顔を上げて、そして僕の言葉に心底驚いたというような顔を作ったあと、そっと微笑んだ。

 

「ええ、そうね。だけどそんなのお互い様でしょ」

 その表情の優しさに、僕はいろいろなことを思い出した。美代と過ごした時間の中にあった、きらめきや、くすみや、オーロラや、シミといったいろいろを。それから僕と美代の間には確かに愛が、もしくは愛のようなものがあったのだということを、ようやく明確に思い出せたのだった。それはあたたかな回顧だった。

 飛行機のぬいぐるみを元の場所に戻した。「タバコを吸ってくるよ」と言って、自分の部屋の扉を開けた。為すべきことが全て分かったような気分で、嬉しくて嬉しくて仕方がなくなってくる。

 

 部屋の窓からベランダに出て、飛行機に近づいた。その鼻の先端をそっと撫でた。

 それはとてもザラザラしていて、僕の知らない手触りだった。

 

 

 

 

 

 

『ロッタレイン』の第一巻、やっと出ましたね。

ロッタレイン 1 (ビッグコミックススペシャル)

ロッタレイン 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

もう「いつ単行本が出るの?」と死ぬほど言いまくってた漫画なんですよ。月刊誌で連載始まってから二年とか経ってて、もう単行本分のストックなんて余裕であるはずなのに単行本出る気配なくて。で、そんなこんなで連載終わるし、なんなら掲載誌のヒバナ自体刊行終わっちゃうし(ほとんどの作品がマンガワン移行なのほんとに悲しい)で。おいおいおいおいって思ってたんですけど、ヒバナ刊行終了のお知らせと同時にひっそり単行本が出ることが告知されててガッツポーズ作りました。

 

序盤の内容を一言で表すと「唯一の肉親だった母親を亡くし、職場でめっちゃパワハラを受けてるバス運転手の男(三十歳)が、パワハラ上司と恋人が浮気している現場を目撃したことをきっかけに頭がバグって職務中に事故を起こし骨折&入院し、その病院にかつて自分と母を捨てた父が現れ、怪我が治るまでという約束で父とその内縁の妻(元浮気相手)が暮らすに新潟の家に身を寄せることになり、その家の中学一年生の娘で勃起する」みたいな感じです。ごめんなさい、俺の一言めっちゃ長いんです。

まあとにかく最悪(褒め言葉です)なんですよ。死ぬほどどん底の状態から始まってそこから再生していく物語なのかなと思ったら、新天地も全然心休まる場所じゃないし。とにかく嫌な方嫌な方に話が転がっていくし。

というかそもそも登場人物に「良い人間」がほとんどいないです。「人間なんて基本自分が可愛くて他人は二の次だし、梅干し見たら唾出てポルノ見たら勃起するでしょ?」みたいなことを丁寧に丁寧に、そして当たりまえのことのよう積み重ねられていくんで、もう読んでるこっちはただただ無抵抗に納得するしかないんですよね。同作者の『甘い水』だとそのへんが結構デフォルメされてた気がするんですが、もうここではひたすら剥きだしです。

 

主人公なんかは特にその象徴みたいな造形で、めちゃくちゃ不幸な目にあってるのに全然応援する気にならないです。

六話の最後とかは特に顕著ですね。物語上とても大きな出来事が起こるんですが、主人公だけがその場の他の人物と全然違う方向を向いてるというか、目の前で起きていることに対してというよりそれによって生じる面倒事への不安とか、あとはその場の空気に対する気まずさとか、そういうものが先にあるということがありありと伝わってくる名シーンです。

 八話で主人公が暴走するんですけど、そことか単純に引きますからね。「なにやってんだこいつ……」みたいな。でもって本来全く共感できないはずなのに、なんだか我がことのように恥ずかしくなってくるみたいな。ほんとになんなんですかねこれ。

 

で、この漫画が凄いのはこんだけ辛くて痛い要素を孕みつつめちゃくちゃ面白いことです。読んでる間ずっと「勘弁してくれ……」って唸ってるような状態なんですが、それでもページ捲る手が止まらなくて。

それは「これからどんだけ最悪になるのか」っていう怖いもの見たさみたいな部分もあるかもしれないんですが、それよりもまず単純に物語の推進力が半端じゃないからなんですよね。あと作者の表現技術・絵の力が本当に凄いです。上述した六話のシーンとかセリフ無しですからね。それ以外にも思わず叫んでしまうようなコマとページがたくさんありました。

それからヒロインの初穂が本当に魅力的です。主人公が勃起するのも分かるな……という場面がいくつもあります。初穂の顔が近すぎる表紙も最初見たときは「近いな……」という感じだったんですが、一巻読み終えた今では「そうなるよな!」という気持ちです。まあそれでも近いことに変わりはないんですけど。

で、その魅力の描き方も本当に絶妙。いやらしくないギリギリのラインなんですよね。最近思春期辺りの男女が低い貞操観念と強い性欲の赴くままにセックスして事後一句読む、みたいな漫画をよく見かけるんですが、そういう漫画とかその漫画の中の一コマをTwitterに貼って「私だ……」とか逆に「いやセックスってこんな大層なもんじゃないでしょ……」とかほざいてる下半身以外の優勝方法を知らないブス(とそのブスにDM送ることと口元隠して自撮りすること以外趣味がないバカ)とかを薙ぎ倒すパワーがあるなと思いました。また戦争仕掛けちゃった。

 

まあとにかくどう転んでも最悪、という感じなんですが果たして物語はどういう展開を迎えるんでしょうか。来月発売の二巻、そして再来月発売の第三巻が待ち遠しくてしょうがないです。

あと作者の過去作がことごとく絶版で入手困難なので、これが爆売れして復刊とかされたら良いのになと思います。 

 

だいたいこんな感じでーす。

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望む姿で生きたいだけなのに

 夏休みが始まって一週間が経った日の昼下がり。友人の畑野の家を訪れた俺を出迎えたのは、銀色の球体だった。

 それは完璧な球状で、そして少しだけ浮遊していた。直径はだいたい一メートルほどだろうか。色は確かに銀色なのだがまぶしく光っているわけではなく、逆に周囲の光を吸い込んで重たい重たい輝きを形成していた。

 最初は部屋を間違ったのかと思ったが、家具や適当に読み捨てられた本などのこの球体を除いた部屋の全体が、何度も訪れている畑野の家であることを物語っている。そして、この部屋に人間は俺一人しかいなかった。俺はもう一度球体を見た。

 

「おう、来たか。麦茶飲むか?まあ俺注げないんだけどさ」

 球体から聞こえた声は楽し気だった。少し胴鳴りのようなものが含まれてはいるが、間違いなく聞き覚えのある畑野の声だった。なんとなくそんな予感はしていたが、この球体は畑野なのだ。

「畑野、お前どうしたんだこれ」

 俺は雑にスニーカーを脱ぎ捨てると、冷蔵庫から麦茶の入ったボトル取り出し、百均のものと思われるマグカップに注いで一気に飲み干した。美味い。やっぱり夏は麦茶に限るな、などとひとりごちながら二杯目を注ぐ。

 

「いやあ、なんて説明したもんかな。ほら、今年の夏って、めちゃくちゃに暑かっただろ」

 確かに、ここ数日は猛暑日が続いている。俺の家から畑野の家までは自転車で十分もかからないというのに、その移動だけで俺の額や首筋にはかなりの量の汗が浮かんでいた。

 

「だから哺乳類でいるのがめんどくさくなっちゃってさあ。金属はいいよ、楽で」 

 なるほど、確かに畑野の説明は筋が通っているように見えた。俺だってこの暑さには正直うんざりしているし、出来ることなら球体になってしまいたい。球体は暑さにも寒さに強い。

 だが、恐らく畑野は嘘を言っている。畑野が大学を出たあとの進路に悩んでいることや、両親と上手くいっていないこと、バイト先で人間関係のトラブルに巻き込まれていることなどを、俺は畑野の恋人の百合ちゃんから聞き及んでいる。今回の変身は、そのあたりに思い悩んでのことなのかもしれない。球体というのは煩わしさとは無縁の、非常に楽なものだから。

 

「話は分かったけど、これからどうすんだ?大学とか、生活とか」

 俺は畑野の言葉を信じたフリをして会話を続けることにした。俺が畑野の苦悩を知っているということを本人に伝えるのは野暮だと思ったからだ。実際のところがどうであれ、本人が暑さのせいと言うのなら、暑さのせいなのだ。

「学校は退学する。部屋も引き払って、山の中にでも籠って暮らすよ。球体なら食事も睡眠もいらないしな」

 畑野は本当にそう考えているのだろうか?少なくとも、声音は真剣そのものだ。

 

「家族はどうするんだ?」

「俺がいなくなっても何も思わないような連中さ」

 どうやら畑野と家族の仲は、百合ちゃんから聞いていた以上に悪いようだ。吐き捨てるような物言いと、発言と同時に重さを増す畑野球体の輝きを見ると、そう思わずにはいられない。

 

「じゃあ、百合ちゃんはどうする」

 俺がそう口にした瞬間、球体の雰囲気が変わったのが分かった。真剣さはそのままに、だけど少し寂しそうな声音で、畑野は言った。

「お前に任せる。百合は、お前が好きなんだよ」

 

 しばらく俺も畑野も黙ったままだった。俺は何を言えば良いのか分からず、ただじっと畑野の言葉を待った。畑野が何を考えてるのか、表情がないので全く読み取れない。球体というのは本当に楽なのだ。無限に思える時間の後、ようやく畑野が話し始めた。

「最近の百合がお前を見てるときの顔、俺が百合を見てるときの顔と全く同じなんだ。あの、優しい熱が頬と目の間に溜まっていくような顔。あんなの見せられたらさすがに感づくさ。一応、これでも二年以上あいつと一緒にいるんだから」

 俺は、まだ黙ったままだった。言うべきことと、言ってはいけないことが頭の中をグルグルと回って、一体どれを掴みとって畑野に伝えるべきかちっとも分からなかった。

 

「なあ、お前になら百合を任せられる。別に恨んでなんかいないさ。球体なんだしな」

「畑野、違うんだ。俺……」

「こんなことお願いして悪いと思ってる。けどお前にしか頼めないことなんだ。百合も最初は驚くと思うけど、きっと納得してくれるさ」

「畑野。俺、知ってたんだよ。お前に言われなくても、百合ちゃんの気持ち」

 

 最初は本当にただの相談だった。畑野くんが悩んでいるみたいなのに力になれない。彼女なのに情けない。呼び出された安居酒屋のカウンターでそう言って落ち込む百合ちゃんを、俺は色々な言葉で慰め、励ました。

 何度かそういった機会があったのだけど、たしかそれは五回目のときに起こったのだと思う。その晩、畑野と大きな喧嘩をしたのだと言っていた百合ちゃんは、店を出るやいなや俺の身体に寄りかかり、「私、疲れちゃいました。少し休んでいきませんか?」と甘えたような声で囁いた。俺の理性は少し震えたが、なんとか押しとどまって彼女一人をタクシーに乗せて帰らせた。

 それが一週間ほど前のことで、その日を境に百合ちゃんは俺への好意を隠さなくなった。毎日俺に会いたがったし、「畑野くんと別れたら付き合ってくれますか?」などと直接的な物言いもするようになった。俺はそれらへの返答をはぐらかし続けた。そして今日、畑野は球体になった。

 

 結局、俺は畑野に全てを打ち明けることになってしまった。他にどうしようもないように思えた。球体は相変わらず重たく輝くだけだった。

「そうか、そうだったんだな……」俺の言葉を噛みしめるようにして、畑野はそう呟いた。

「すまん、畑野。なかなか言い出せなくて」

 

「いいんだよ。気にするな。というか好都合じゃないか。俺のことなんか気にせず、百合の気持ちに応えてやってくれよ」

「畑野……」俺は心底気まずそうな、申し訳なさそうな声を作った。「俺、四角形の女の子はちょっと……」

 百合ちゃんが四角形になったのは、去年の秋のことだ。四角形とは言っても畑野の球体ほど完全なものではなく、立方体に手足が生えているような姿ではあるが。ストレスのせいだと本人は言っていた。

 

「そうなのか……」

「すまん……」

「いや、お前が謝ることじゃないさ。けど、どうしたもんかなあ」

「それなんだけど」仕切り直すように、俺は大げさな咳払いをした。

 

「まず、お前は百合ちゃんと話し合うべきだと思う。元々俺に気持ちが向いてたのだって、お前との喧嘩でヤケになったからみたいなところもあるだろうし。その辺りを確認しないで関係を終わらせるのは、百合ちゃんにも失礼だよ」

 実際、俺と百合ちゃんが二人で会っていたのは本来畑野のためだったのだ。畑野の役に立ちたいと言っていた彼女の気持ちを俺だって信じたい。

 

「俺たち、まだやり直せるのかなあ」畑野の声は、泣いているようにも聞こえた。

「それも含めて、確かめないのはただの逃げだと思うぜ。いいじゃないか、仮に振られても、球体なら平気だろ」俺は半ば無理矢理に笑顔を作ってそう言った。

「それで、球体のまま山に籠るか、人間に戻るか、それとも百合ちゃんとおそろいの四角形になるかを決めればいいさ」今度はようやく自然な笑顔で言って、球体になってから初めて畑野の身体をさするようにして触った。球体は金属特有の鈍い冷気を帯びていた。

 

「いや、それなんだが……」畑野は少し困ったような声を出した。「球体になってから、変身の仕方が分からなくなってしまったんだよな」

 ということは、元に戻る方法も分からないということか。何か手立てはないものだろうか。俺は少し考え、そして一つの思い付きと共に大げさに手を打った。

「そうだ、球体病院で検査を受けよう。何か薬もあるかもしれん」

「そうか……そうだな。そうしよう」俺の提案に畑野が乗った。確かここから歩いて行ける範囲に、そこそこ大きな球体病院があったはずだ。

 

 病院までの移動は、球体が往来を行くのはいたずらに注目を集めるという畑野の意見を聞き入れ、借りてきたリヤカーに畑野を載せて運ぶフリをすることにした。畑野は浮遊しているため重さは感じないのだが、それがなんだか逆に悲しかった。

 球体病院で事情を説明すると、畑野は検査入院をすることになった。変身によって生じる身体の変化には個人差があるため、数日間かけて慎重に検査をする必要があるらしい。「百合には検査が終わってから話すよ」そう言って、畑野は奥の病室に入っていった。

 

 それから数日後、畑野から一通の手紙が届いた。宛名は俺と百合ちゃんの連名だった。

 看護師に口述筆記で書いてもらったというその手紙には、「検査の結果、自分の身体は銀ではなく『土産物屋に売っている竜が剣に絡みついているキーホルダーの素』で出来ていることが分かり、『土産物屋に売っている竜が剣に絡みついているキーホルダーの素』から人間や他の図形に変身することは非常に難しいことも判明した。それを受け入れ、今後は『土産物屋に売っている竜が剣に絡みついているキーホルダーの素』としての人生を送ろうと思う。手始めに全国の土産物屋を巡るので、しばらく会えそうにないが心配しないでくれ」と書かれていた。

「返事なんか書かなくて良いんじゃない?」と、隣で一緒に読んでいた百合ちゃんが笑った。

 

 

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だいたいこんな感じでーす。

戦車のいない九月が来る

 先週、戦車と散歩に出たのですが、キャタピラ部からきゅららきゅららと、今まで聞いたことのないような音が鳴っていて、あれおかしいなと思い、油を差そうと考えたものの、あいにく家には質のよいものがなく(食卓の塩は岩塩なのですけれど?)、散歩の道順を変えて、『デレレッポ・チチパ』に行くことにしました。

 その日の朝食を反芻しながら歩くことが、我々の散歩の流儀であり(あなたの宗教の神様はあなたです)、その日はジャーマンポテトとカプレーゼで、それはドイツで作られて、イタリアで三角形になった(お湯につけたら戻りました)、そんな戦車に対しての私なりの気遣いです。でした。変形。

  『デレレッポ・チチパ』は吉祥寺駅前にある賓片蕗(ひんぴらふき)段落に身を横たえて埋没し、侵入した先にある戦車店(と私の視点からは解釈できる)で、そんな面倒なことをしなくとも、駱駝に乗ってくればすぐ着く(ふたこぶ駱駝のお客様限定)のですが、私は駱駝を持っておらず(戦車は持っていますが、意外なことに戦車は駱駝ではない。昭和は良かった)、そのためこのようになります。

 

 到着は到着で、出発は出発(今年の恵方はキス・キス・キス)ですが、問題はその道程にあり、戦車のキャタピラは井の頭公園で、散歩中の人類を、766人轢き殺し(目視した範囲)、多方面から遺憾の意が、出たり入ったりしたので、私も出られたり入られたりしたということになります(違ったら教えてください)。

 他にも100匹の犬(101匹目がワンちゃんです)といくつかの八百比丘尼も轢殺したのですが、鳩、鳩、鳩は無敵なので、どうにもなりませんでした(鳩はただの平和の象徴ですが、鳩、鳩、鳩となると無敵なので無理です。戦車は所詮戦車)。

 あとは猫、のんきに道端横たわる猫のまつ毛、いやその生え際の実質的には頬の、その猫の額ほどの頬(額とは?頬とは?)の、入り組んだ毛に住み着くノミの、その身体にわらわらと生えた何本かの足の、生み出し生み出される健気なジャンプ力が怖い(怖いので戦車に無理を言って一発撃ってもらうと、あたりはすっかり静かになりました。いつまでもいつまでも静かでした)。

 

 ともかく、避けようのなく=責任もない轢殺の果て、『デレレッポ・チチパ』は今日も存在、その事実に打ち震えながら営業し、店主の(・∀ ・)は初代プレステ時代のFFキャラぐらいのポリゴン度で、にこやかに笑っていました。

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   ↑参考資料(画像は開発中のものです)

 (・∀ ・)は(・∀ ・)であり、( ・∀・)ではないため、その差異に我々は細心の注意を払う必要があり(有史以来、前者はまたんき、後者はモララーと呼ばれていました)、間違うと以降の朝食が「泉こなた」「おがくず」「すあま」の三択のみとなってしまい、「泉こなた」を選ぶとその回数分彼女が家に住み着くことになり、それは延々堆積するのですが、稀にCVが平野綾ではなく、博多大吉声の「泉こなた」が出てくることがあり、そうすると連鎖反応で全て消えます。

「この前渋谷でもこのお店を見かけましたがあれは?」「あれもこれです。『デレレッポ・チチパ』は偏在するので」「支店ということですか?」「違います。偏在しているだけです。偏在店が点々、です」「なるほど」「わかりましたか?」「いいえ全く」「アハハハ・ハハ。偏在店にも是非お越しください、ときどき展示もやってますので。偏在展を」「はあ」「それから『デレレッポ・チチパ』について一冊の本にまとめたものが来月出版されます。いわゆるひとつの……」「偏在典ですか」「コーラです」

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 (・∀ ・)との会話は無益を極め、苛立ちと同時に酷く喉が渇いたので、私はさっさと要件を済ませることにしました(この間ずっとどこかでピチョ、ポチョ、チョピ、と音がしており、最初は雨漏りかなと思ったのですが、あとから確認したら木星から漏れ出てワープした宇宙麦茶でした)。

  私は戦車から異音がすることと、劣っていることと変わっていることは違うということを(・∀ ・)に伝え(概念の話をすると(・∀ ・)は喜び、割引をしてくれるのです)、それを聞いた彼(あるいは彼女、あるいはインターネット)は戦車の全体をじっくりと観察し始めました。

 そうしてしばらくして、彼の口から出た言葉は、私を酷く落胆させるもので、それはつまり戦車の異常は油差し程度では治らず、更に言うとその異常は非常に重篤で、そう遠くないうちに戦車は動かなくなってしまうということであり、私はもちろんそれを信じたくはありませんでしたが、殊戦車に於いて(・∀ ・)以上の目利きなどいませんから、私に出来ることは、静かに、穏やかに、今目の前に突如現れた事実を受け入れること、ただそれだけでした。

 私の落胆を見て、(・∀ ・)は「簡単な点検なので、料金は結構です」と言ってくれましたが、私はそれを受け入れず、半ば叩きつけるように『グイン・サーガ24巻』をレジに置き、(・∀ ・)の「装備していくかい?」の声を無視して、戦車と共に店を出ました(退店時、戦車が出入り口に引っかかり、『デレレッポ・チチパ』の残機は2まで減りましたが、『グイン・サーガ24巻』を支払ったので大丈夫です)。

 

 肩を落として、静かな、本当に静かな井の頭公園を行く私の耳には、たしかに戦車から漏れ出る異音が聞こえていて、それは私をとても悲しくさせましたが、井の頭自然文化園の入場門近くで他の音に遮られてしまいました。

 それは『完全なる高校野球の日』が、「ゾウを殺さないでください」と懇願する声で、しかし『完全なる高校野球の日』は狂っている(そのうえ臭い)ので、誰も耳を貸しませんし、そもそも井の頭自然文化園のゾウは、もういないので、私はなるべく戦車の音にだけ耳を澄ませながら、その脇を通り抜けていきました。

”はな子(はなこ、1947年 - 2016年5月26日)は、東京都武蔵野市井の頭自然文化園で飼育されていたメスのアジアゾウである[1]

第二次大戦後に初めて日本にやって来たゾウであり[2][3]2013年1月に66歳でアジアゾウの国内最高齢記録を更新し、日本で飼育された中で最も長寿のゾウとなった[1][2]。゛

 

 井の頭公園一帯を抜けると、我が家が近づいてくるのですが、それはつまり私と戦車の家で、そして近い将来私だけの家になる(そして戦車の家ではなくなる)ので、私は悲しくなり(もう、なにもかもが悲しい)、立ち止まって泣きました。

 少しして泣き止んだとき、私は戦車から聞こえる音が、かららんかららんと変わっている(前はきゅららきゅららだか、ネリリ・ハララだかでした)ことに気が付き、それはなんだか、戦車の中になにか悪くて固いようなものが、入って、回って、鳴っているかのように思え、骨だ骨骨、骨に違いないと考えました(これ以上に完璧な理論はこの世にはない)。

 その骨は、ふたこぶ駱駝、『完全なる高校野球の日』、(・∀ ・)、ジャーマンポテト、はな子、『グイン・サーガ24巻』、賓片蕗段落、岩塩、井の頭公園、100匹の犬と766人の人類といくつかの八百比丘尼、あるいはこの世の全ての骨の可能性が非常に高いのですが、私は私自身の骨だと良いな、戦車を終わらせるのが私の骨なら幸せだな、と妙に浮かれて、もう何も、悲しくも寂しくもおかしくもありませんでした。

 

 私が死んだらその骨をコックピットに投げ入れて、戦車をお墓にしてください。

 それが、たったひとつの愛なのです。

 

 

 

だいたいこんな感じでーす。

「過ぎたことは過ぎたこと」なんて言って、俺たち会ったら昔の話ばっかじゃんね

今回は総集編でお送りします。

 

・バイトの面接で、まあそこは如才(これ、いつまで経っても「にょさい」って読んじゃうな)なくこなしたんだけど、履歴書に書いた住所を間違っていた気がしてしょうがない。連絡が配送らしいので不安。社会性。

・そのあと下川氏と北口氏と中華料理屋で会食。所謂オフ会。北口氏、会ったことも写真を見たこともないけど一発で分かった。同類は呼応し合う仕組み。鶏とネギの胡椒和えみたいなやつが美味しかった。

・北口氏は大分在住だけど来年から横浜で働き始めるらしいしたくさん遊べたらなと思う。オタクの友達は多いと嬉しい。

 

・金子のワンマンに行ってめっちゃ良くてオウワーッとなった。ちょっと遅刻したのと、後ろの方で観てたから本村が新しいベースを使ってるかどうか目視出来なかったことだけが残念だった。

・打ち上げが阿佐ヶ谷であって(ゆっくりたくさん話せてよかった)、そのあと二次会がカラオケになりそうだったから抜け出した(カラオケボックスに行くと音がデカすぎるのと暗くて狭いのとで精神が加速する)。午前二時とかだったから三駅分歩いた。

・道すがら一昨年吉祥寺に住んでた時も福田の家に行くために良く自転車で阿佐ヶ谷に行っていたことを思い出す。そのとき何度も迷ったところ(気が付いたら看板の行先が高円寺になっている)でまた迷ってしまって自分の成長しなさに笑った。前住んでた吉祥寺東町のマンションを少し眺めて四時ごろ家に着いた。

 

・「すき家に行くということはつまり、チーズ牛丼を頼むということである」誰の言葉かは知らないけれど、とても素敵で正鵠を射ていると思う。恐らく発言したのは哲学者か社会学者だろう。小説家や音楽家の口からは本当の言葉は出てこない。

・「タバスコをかける時には、タバスコの存在しなかった時代のことを考えると良い。そうすると、ちょうど良い塩梅でかけられる」これは僕の言葉だけど、かなりいい線をいっていると思う。その証拠に今僕の目の前のメニュー表には、チーズ牛丼の並盛と大盛しか書かれていない。コールスローサラダすら、だ。だけど今日は少しタバスコをかけすぎて咽た。

・レジで五百円玉を差し出して帰って来た時の十円はあんなにも頼もしそうに見えたのに、店を出て自動販売機の前に立った瞬間この世で一番情けない存在に思えてくる。こういうことは頻繁に起こる。

 

・一か月以上働いていないせいで時間が余ってしょうがないから、ずっと小説を書いていた。字数換算で十五万字ほどで、そしてそのほとんどがどうしようもない駄文なのだけど、書くことが楽しかったので良い暇つぶしにはなった。

・書いていて一番楽しかったのは餃子を主題に据えた『アメリカの鱒釣り』風のもので、僕はゲラゲラ笑いながら書いていたけど人に見せられるようなものではなかった。あとは夜行バスを舞台にしたボーイミーツガールとか、まあそんなもの。もっと上手く書けるようになったら楽しいのになと思う。

 

 

『君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所』を読みました。タイトルこそ違いますがこの二冊で上下巻という構成です。

顔に大きな痣を持ち、そのせいで後ろ向きな人生を送ってきた主人公が、公衆電話に突如かかってきた不思議な電話の主に「痣が消えた状態で、諦めた初恋を成就させられたら主人公の勝ち。出来なければ負け」という賭けを持ち掛けられ、そして実際に痣は消え、初恋の相手とも再会するが……。という出だしの、かなりファンタジー色の強い恋愛ものです。

高校一年生の主人公の目線を通して描写される夏の雰囲気がとても良いですね。ある種のリプレイ的な内容と相まってかなりノスタルジィを喚起させられます。全編につきまとうほろ苦さも良いスパイスです。

作者の他作品と比べると少し複雑な人間関係が描かれている(単純に登場人物が多い)点や、童話の人魚姫に題材を求めている点など、かなり意欲的な作品だと思います。ジャンル的に好き嫌い分かれるかもしれませんが、エンタメ小説が好きな人は楽しめるでしょう。オススメです。

 

風船すらおかしくなる時代です

この前知り合いがTwitterで彼氏のことを「氏」と呼んでいて、おっ苛立ち~という感じだったんですが、これ仮に彼女をこのパターンに当てはめると「女」になってめっちゃカドが立つ感じありますね。まあお前にどう思われようがどうでもええんやけど。

近況なんですけど相変わらず働いてないです。というかチンポジウム以降だと散歩とスタジオでしか外出してないですね。人と会ったのはスタジオだけです。私たちもう終わりなのかな?チンポジウム以降と以前という時間の区切り方が、確かにこの世にはあります。

ブログの更新頻度を上げてからかなり定期的に無意味ショートショートみたいなのを書いててそこそこ反応もあって嬉しかったんですが、ああいうのばかり書いてると体調悪くなってきたんで今日は普通の日記というか、適当にダラダラ書くアレです。一週間ぐらい間が空いたことについてはノーコメントです。

 

今日は8日ぶりに家族以外の人類とコンタクトを取りました。まあバンドの練習なんですけど。電車に乗ったのも8日ぶりだったのでめっちゃ体調悪くなりましたね。

バンドメンバーもいいかげん付き合いが長くなってきて(全員高校時代からの知り合い)、コミュニケーションの取り方がバグってきたというか「あー」と言えば「うぅっ」と返ってきてそれで完了。みたいな。もうそんなんなんで一緒にいてもストレス無いんですよね。全人類僕が「あー」って言ったら「うぅっ」って返してくれるようになったら良いのにね。

 次のライブは7月18日に高円寺UFOクラブです。何気に出るの初めてですね(前にも誘われてたんですが、なんかめっちゃ電話掛けてくるから怖くなって着信拒否した)。余命百年やまのはの企画です。呼んでくれてサンキューな。

 

時々夜中に散歩に繰り出してはひたすら暗いアスファルトを配信してるんですが、やっぱり夜の街を歩くというのは非常に良いものだなと思います。

特に雨上がりとか最高ですね。雨上がりってなんていうか独特な匂いがするじゃないですか。あのコンクリートの匂いっていうか。なんなんですかねアレ。その独特の匂いが夏場だと余計に強烈で、外出して一度空気を吸い込むだけで全細胞があの匂いと結びついたような気持ちになるんですよね。それが好きで蒸し暑くてもつい家から出てしまいます。

あとは湿り気を孕んでより黒々としてる道路の姿とか、ささやかな水たまりが街灯でキャラキャラと輝くさまとか良いですよね。水たまりで言うと垂れたガソリンと混じってふざけた虹色みたいになってるのも好きです。世の中全部ああいうもので出来てたら良いのにね。俺とか、お前とか。あとバイトとか。

 

 夏の夜の雨上がりの道路みたいなバイト(シフト・髪型自由)を探しています。時給はいくらでも良いです。

 

 

舞城王太郎の『みんな元気。』を読みました。

みんな元気。

みんな元気。

 

中編程度の長さの表題作に掌編が二つくっついてます。なんか元は『スクールアタック・シンドローム』と合わせて一冊の単行本だったらしいです。おめでとう。

なんかネットでの評判を見てると、まとまりの無さを主な理由にそこまで評価が高くないみたいなんですが、僕はとても楽しめました。まあそもそも単純にこの人の文章が好きなんですけど。

 

僕は勝手にこのお話のテーマは「跳躍力」(ニュアンスの話なので読んだ人それぞれにこれと似たようなワードが浮かんでくると思います)だと思ったんですが、それが出るだけ出て処理されないいくつもの小さな出来事を動力に進むジェットコースター的展開の遠心力と上手く絡み合っていて、そういう意味ではまとまりがない、なんて風には全く感じませんでした。

どう考えてもめちゃくちゃで辻褄合ってねえだろ!みたいな展開を、マシンガンみたいな文章ととんでもないロマンチシズムで押し通す舞城作品の感じ本当に最高ですよね。ファンなんですけど思っていたより未読の作品多かったことに気が付いたので、ちょこちょこ手を出していきたいです。

 

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 

あとガルシアマルケスを久しぶりに読んでいるんですけど、めちゃ面白い代わりにめちゃ読みづらいです。登場人物がみんなフルネームなのが本当にキツイ。

『予告された殺人の記録』は中編なんですがそれでも読むのにかなりかかってます。『百年の孤独』は二十歳の頃一回読んだんですけどこの感じだと再読する気にはなれないですね。

というか『百年の孤独』どこに行ったんだろう。捨てちゃったのかな。3000円とかするから買い直したくねえ~~。

今年の夏はなんとなく避けてた名作をちゃんと読んでいきたいですね。大江健三郎とか。

 

だいたいこんな感じでーす。