ならそれでいいです

そろそろ優勝したい

今年の呪い今年のうちに~2016年マイベスト(漫画編)~

明けました。

 

一日遅れてすいません。

「今年の呪い今年のうちに」とか言ってこの失態ですからね。2017年もボンクラ全開。

というわけで後編です。今回の記事は全てを使って漫画について書きます。

 

漫画

 

今年1巻あるいは最終巻が刊行されたもの(あと短編集)の中から紹介していきます。

この制約、本当になんなんですか?

紹介が難しいやつとそうでないやつがあり、前者はめちゃくちゃ簡素に紹介します。

あとなるべく気を付けてはいるんですがネタバレもしがちなので注意してくださいね。 

 

ミッドナイトブルー / 須藤佑実

ミッドナイトブルー (フィールコミックス)

ミッドナイトブルー (フィールコミックス)

 

日常と非日常、コメディとシリアスの境界をひょいひょいと飛び越える不思議な読み味の前作「流寓の姉妹」もとても良かったんですが、女性誌フィールヤングで発表された短編をまとめた本作はそれ以上の良さです。

 

歪な恋愛ばかりを取り扱ってはいるんですが、読んでいるうちにその歪さが登場人物たちのピュアさに依るものだと気づかされるんですよね。

ピュアだからこそ不器用であり、少しのことで歪んだり傷ついたりしてしまうけれど、本作は徹底してその弱さともなり得る一面を肯定し続けています。

そしてそんな人物たちを俯瞰するように描いているところに、フィクション上の恋愛への憧憬やもう恐らくそれらの美しいものが手に入らないであろうことへの諦めが見え隠れするあたりが絶妙です。このあたりがノスタルジックな読後感を残す理由かもしれません。

 

収録作の中ではやはりというべきか表題作でもある「ミッドナイトブルー」が白眉だと思います。

物語の開始時点で完全に分断されてしまった二人の関係が、か細い1点だけを残しながら時間、そして距離すらも離れていくどうしようもなさが胸を打ちます。

終わったあとに始まる恋愛、というものの美しさと虚しさに思いを馳せずにはいられない一編で、これだけでも読む価値はあると思うのですが、他の収録作との対比がより感動を引き立てていると思うのでぜひともコミックス一気読みで楽しんでもらいたいです。超オススメ。

 

 

ソフトメタルヴァンパイア / 遠藤浩輝

遠藤浩輝がなんかポップなノリですげえジェノサイドしてる!!!!→最高

ボンクラどもはさっさと書店に走れ。

 

 

 青猫について / 小原愼司

小原愼司の新作はまさかの劇画でした。

セーラー服を纏った剣客少女青猫が仇を探しつつ気に入らねえやつをバッサバサと……みたいな書き方をすると痛快なチャンバラものみたいですが、実際はドロドロの復讐譚ですね。

正義なんてものはありゃしない、終戦直後の東京で繰り広げられる一切遠慮のないエログロ劇は読み手を選びそうですが、耐性のある方には読んでもらいたいなと思います。

 

 

ろみちゃんの恋、かな? / 武田春人

ろみちゃんの恋、かな? (楽園コミックス)

ろみちゃんの恋、かな? (楽園コミックス)

 

表紙を見て分かる通り非常に個性的(超オブラート)な絵柄の漫画です。そしてジャンル的には百合ということで、僕も友人にすすめられるまでは購入を検討してすらいませんでした。

ですが読んでみるとめちゃ良かったです。正直登場人物の判別がつかないことすらあるんですが、そんなことは些細なことのように思えるほどテンポ良く読まされてしまいます。

 

主人公二人とその周囲の人物の掛け合いを楽しんでいると、いつの間にか二人の関係性が変化していることに気付きその描写の自然さに驚かされました。

友情恋愛信頼なんて言葉の意味もわからないままに、お互いを大事に思う気持ちだけが募っていく二人を応援せずにはいられない柔らかくて温かな漫画です。来年は百合にも手を出してみようかな。

 

 

漫画ルポ 中年童貞 / 桜壱バーゲン

もうタイトルと表紙で作品の説明が完了していますね。少しでも眉を顰めた方は回れ右でお願いします。

 

桜壱バーゲン氏の「あの」オッサンたちの絵で真に迫った非モテエピソードを連打されると、最初のほうこそ笑っていられるものの段々感情が平坦になっていきますね。

自尊心が強すぎたり、あるいは弱すぎたりで女性と上手くコミュニケーションが取れない感じとか身につまされるものがありありですね。漫画から学ぶところは多い。

 

 

取水塔 / 粟岳高弘

取水塔

取水塔

 

いつもの粟岳漫画です。つまり意味不明。つまり最高。

謎の動力で女の子が空を飛んだり、謎の生き物と女の子が出会ったり、謎の原理で女の子がワープしたり、謎の女の子が全裸になってたり。いい加減にしろ。

 

ただ本作は作者の入門編としては最適だと思います。理由はこれが長く同人活動で書かれた続き物をまとめたもので、ストーリーが明確にあるから(他作品は基本的にストーリーのない話が多く、悪い夢が弾けたように終わることも珍しくない)。

意味の分からないものを意味の分からないまま楽しめる人や、へんてこSFが好きな人はハマると思います。知らず知らずのうちにクセになっている作家です。

 

 

わたしのカイロス / からあげたろう

わたしのカイロス 1巻 (バンチコミックス)

わたしのカイロス 1巻 (バンチコミックス)

 

星新一の「処刑」を思わせる最高なイントロダクションからの切迫したバトル、SF的ガジェット、王道のようで捻りの加えられたファンタジー世界。もうたまらないですよね。

上記リンクから物語の導入部が読めるのでちょっとでもピンと来た方は是非。

本作を構成する要素がいちいち僕の好みなのでちゃんとした紹介はできません(素直)!巻数も少ないですしいまのうちに追いかけはじめたほうが良い漫画だと思います。

 

 

hなhとA子の呪い / 中野でいち

hなhとA子の呪い(1)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

hなhとA子の呪い(1)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

 

創作するということにまつわる業を真正面から描き、文句なしのハッピーエンドでまとめあげた意欲作「十月桜」で単行本デビューした中野でいち氏の新作。

本作のテーマは「性欲」。とにかくこの人は主題の選び方というか目の付け所が独特ですね。

 

セックスなしで恋愛は成立するのか、いま自分の抱いている感情は愛なのか性欲なのか、という恐らく誰もが考えたであろうテーマを外連味全開のキャラに背負わせることで、どこか喜劇的な味わいすら出てきているのが凄まじいところです。

自身の鏡のような存在のA子に振り回される針辻は、その幻影を振り払って真実の愛に辿り着けるのか?そしてそこに性欲は存在しないのか?ハイスピードで進む物語の行く末が今から楽しみです。

 

 

変身! / 横山旬

変身! 3巻 (ビームコミックス)

変身! 3巻 (ビームコミックス)

 

無機物有機物なんにでも変身出来る能力を持つヒデが、何故かそれを見破れる超オテンバのマリに振り回されながらドタバタを繰り広げる不思議コメディ。4月に出た第3巻で大団円を迎えました。

作中での時間経過に伴って成長したヒデの変身能力もどんどん進化していき、一体どこに着地するんだろうかと不思議でしたがものすごくきれいに纏まったなと思います。

 

思わずバッタで童貞を捨ててしまうぐらいには変身能力以外が情けなさ過ぎるヒデ。彼のそんな普通の男の子であることが物語を動かす原動力になっているのも面白いところです。

最終巻で彼の見せた『最後の』変身のスケールのデカさには思わず笑ってしまいましたが、エピローグ的位置づけの最終話も含めて魅力的な登場人物が全員そのらしさを発揮していて読んでいてずっと楽しめるお話でした。

 

 

ヨルとネル / 施川ユウキ

こういう「いつか終わりが来るとわかっている逃避行」が性癖と言ってもいいぐらいに好きなんですよね。理由は不明なんですけど(「イリヤの空、UFOの夏」の影響?)。

 

実験施設から逃げ出してひたすら南へ向かう二人の小人(身長11センチ)の少年の道中を描いた本作は、基本的に説明的な描写の省かれた軽いタッチで描かれ、なんどか訪れる危機もそこまで深刻になることなく退けます。

そして一つの山場を越えたところで明かされる真相と迎える旅の終わり。ある種唐突にも感じられるんですが、そこには妙な納得感があって、それを支えているのが序盤の軽妙なやり取りのリアリティなんだと思います。

 

施川ユウキ作品を読んでいて思うのは「この人は発見の天才なんだろうな」ということです。発想力というのはものを作る人間にとって必要不可欠なものだと思うんですが、氏はそれに加えて生活の中での「気付き」とそれを物語の一部に変換して伝える能力が圧倒的に高いのではないでしょうか。

本作から例を出すと本のページの間に挟まって「押入れで布団に挟まるのに似てるかも」「(中略)意外と早く飽きるだろ?」というやり取りをする件があるんですが、こういった「本来分かりえないはずのものを受け手が共感できるところまで降ろす」のが抜群に上手いんですよね。たぶん本を読みながら「これの間に挟まって寝たら気持ちいいんだろうな」とか考えているんじゃないですかね。

こういったものの積み重ねがあることで受け手は終盤の急な展開に納得しやすくなっているんだと思います。なにより実際の別れや終わりは想像よりも突然であることを我々は実体験から知っているわけですし。

 

序盤の楽し気な小人二人に感情移入すると、それぞれが「終わってしまったもの」「これから終わりゆくもの」に姿を変えて、それでも進んでいくラストには心を動かさずにはいられません。

物語の終わった後にまだ少し残った続きのことを考えると、某映画の「天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ」という名セリフが頭に浮かんでしまいます。オススメです。

 

 

双亡亭壊すべし / 藤田和日郎

双亡亭壊すべし 1 (少年サンデーコミックス)
 

2015年の個人的ベストは「黒博物館ゴーストアンドレディ」だったんですが、最新作のこちらも読みごたえ抜群でさすがといったところです。

空爆だろうがなんだろうが破壊できない幽霊屋敷、双亡亭を敵役に据えたホラーアクション漫画で、同作者のファンなら間違いなく楽しめるんじゃないでしょうか。

未だ全容の見えない双亡亭の底知れなさは過去作の敵キャラと比べても異質なものに感じますし、作者の新たな代表作になる予感がプンプンします。

 

 

春の呪い / 小西明日翔

春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)

春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)

 

溺愛(依存)していた妹の春が自分の全てだった夏美は、春の病死後その婚約者冬吾と交際を始め妹の痕跡を辿る……。あらすじ書いただけでお腹が痛くなりそうですが、とにかく鮮烈な第1巻が印象的だった本作はクリスマスに刊行された第2巻で無事完結を迎えました。

とにかく登場人物が少しずつ壊れてるのが最高ですね。特に表面的には明るくて能天気にも見える夏美が抱える春への歪み切った愛情なんかは凄まじいものがあります。

 

故人であり穏やかで可愛らしい女性といった感じの春の人物像が、自身の闘病の中で渦巻く心境を吐露したSNSアカウントの発覚を経て一気に反転する2巻冒頭の展開は圧巻でした。

特に切実で儚くささやかなもののように見えた「棺に冬吾と撮った写真を入れてもらう」という夏美へのお願いに隠された真相には背筋の凍る思いでしたね。死への恐怖や深い悲しみ、割り切れない嫉妬心が生んだそれが最も強く残った春の痕跡だというのは、皮肉な話です。

三人の中では冬吾が一番まともかもしれませんが、まあ彼も彼でいろいろ問題があります。夏美とはお似合いだと思いますけど。

 

そしてこれらのドロドロしたアレコレを抱えながら、捨て鉢になりきらない程度にヤケクソに、でも前を向いて進んでいくラストは、批判もあるようですが個人的にはとても良かったと思います。

二人の間にあるものが恋愛感情なのかどうかは判然としないところではありますが、ある種共犯関係的に繋がった二人の着地点はそこに至るまでの過程を考えると自然かつ現実的なようにも思います。

もしもこの先が地獄へつながる道で未来が呪われたものだろうと、二人なら歩いて行けるってことなんでしょう。オススメです。

 

 

バタフライ・ストレージ / 安藤維子里

バタフライ・ストレージ 1 (リュウコミックス)

バタフライ・ストレージ 1 (リュウコミックス)

 

人は死ぬと蝶になり、肉体は朽ちて塵となる。という幻想的な特殊設定を物語の根幹に据えたSFアクション。幻想的なファンタジー短編を多く発表していた作者だったので、この作風の変更には驚きました。

やはりこの蝶に関する設定が秀逸ですね。その希少性から蝶が秘密裏に高値で売買されていることや、警察とは別にそれらを取り締まる機関があること、個人的な事情でその機関の職員の中でも蝶に対する思いが人一倍強い主人公の異常性など、全てに納得がいく説明がされているところもいいですね。

 

49日以内に特殊な処理をしないと消えてしまう蝶の儚さや、それを文字通り「食べて」しまう敵の恐ろしさなど、読み手を惹きつける要素が他にも満載です。

まだストーリーは序盤も序盤かと思われますが、最近少し元気のないこの手のジャンルのなかでは断トツで楽しみにしている漫画です。

 

 

よろこびのうた / ウチヤマユージ

よろこびのうた (イブニングコミックス)

よろこびのうた (イブニングコミックス)

 

広告でもときどき見かけるので、結構知っている人は多いんじゃないでしょうか。

老夫婦の焼身心中を出発点に、時間を巻き戻して何が起こったかを描いた異色作です。前作「月光」もそうだったんですが、サスペンス的な題材でありながらどこかのどかな雰囲気を持っているのがウチヤマユージ作品のいいところですね。

 

穏やかに「正しく」生活していたはずの人々に災害のように降りかかった事件の顛末。そしてそれが引き起こす不幸を経て冒頭の選択に至る、という流れを見ているとシンプルなタイトルに様々な意味合いが隠されているようにも感じます。

老々介護を扱った作品ではありますが、ノンフィクション的要素は求めず単純にサスペンス、そしてラブストーリーとして読むのが良いと思います。

 

 

コオリオニ / 梶本レイカ

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

 

稲葉事件と呼ばれる北海道警察の不祥事をモデルにしたノワールボーイズラブ漫画でもあります。

上半期にネット上でそこそこ話題になってたんですが、BL作品だからといってスルーするにはあまりに惜しい作品だと思います。

 

情報量熱量がとんでもなく、読んだらみんなぶっ飛ばされると思います。腰据えて読んでほしい漫画ですね。

大きな組織を巻き込んだ物語全てが結局人間の掌に収まっていく(なのにスケールダウンした感はない)様子だけで、作者の力量がとんでもないことが分かってとてもいいですね。

社会派っぽい要素とか、なによりガッツリBL漫画(耽美な絵柄で獣みたいに男同士が絡み合います)であるところとか、お世辞にも万人に受け入れられやすい作品だとは言えないんですが、今年読んだ中で一番熱のこもった漫画だったのは間違いないです。オススメ。

 

 

と、まあこんな感じですかね。今年は良い漫画がたくさん読めて良かったです。

あと個人的にライフタイムベスト級の漫画である「G戦場ヘヴンズドア」の完全版の刊行も嬉しいニュースでしたね。読んだことないオタクは読んでくれよな。

それから今年の漫画といえば「この世界の片隅に」も外せないと思います。

映画もとても良かったですが原作には原作にしかないワンダーが詰まっているのでオススメですよ。

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

 

それからWEB漫画の話も少ししましょうかね。あんまり2016年は読まなかったですけど。

まずはなんといっても「密着!帰宅部24時」の完結は大きなニュースだったと思います。 

僕が高校生のときからずっと楽しく読ませてもらいました。一旦完結とのことで番外編など楽しみにしています。お疲れさまでした。

 

あと去年一番ハマったWEB漫画であるところの「氷の鱗」は続編の「ミスター残念賞」が連載中です。読んでて最高に背筋がピリピリする。


そんな感じの2016年の漫画でしたがベストを一冊挙げるなら

 

 

かんぺきな街 / 売野機子

かんぺきな街 (ウィングス・コミックス)

かんぺきな街 (ウィングス・コミックス)

 

こうなっちゃいます。

どうオススメしたらいいかわからないんで、とにかく読めという気持ちが強い。

 

とても素敵な絵ととても素敵な言葉がとても素敵な物語になりました!みたいな漫画です。伝わりました?

 

絵からなにから美しすぎるので、読んでいるうちにどんどん語彙が消滅していくんですよね。言葉はいらないってこういうことなのかな。

売野氏は「クリスマスプレゼントなんていらない」も最高だったんですが、一冊選べって言われたらこっちかなという感じです。どっちも甲乙つけがたいんですけどね。

 

とにかく「こんな漫画読んだことねえ!」となる一冊です。マジで読んでくれ。

漫画に限らず2016年触れたあらゆるものの中でベストだと思いました。俺もこうなりたい(?)。

 

というわけで2016年マイベスト、漫画編は売野機子先生の「かんぺきな街」でした。本当にこれはオススメなんで、お願いします。

 

 

2016年を振り返る企画は以上です。2017年も沢山素敵なものに触れていきたいですね。

今年も細々ブログや営みを頑張っていくのでよろしくお願いします。

 

だいたいこんな感じでーす。